日本は全人口における認知症有病率が2.33%となり、OECD加盟国のうちで最多となりました。これは2位のイタリア3位のドイツと比べても高い値であり、OECDの平均である1.48%と比べると大きな乖離がみられます。
●認知症にかかりやすい国と、かかりにくい国
それぞれの特徴とはどういったものなのでしょうか?公衆衛生学専門誌に掲載された研究によると、「清潔で所得が高い国の都市部ではアルツハイマー病の発症率が高い」ということがわかったそうです。
これには微生物がいないため免疫が衰えてしまい、免疫に重要な「T細胞」ができなくなるといった原因が考えられるようで、実際、T細胞が欠けた状態はアルツハイマー病患者の脳でよくみられる炎症反応との関連性が報告がされています。
●認知症が減っている国がある!
実は2013年にイギリスからその報告がありました。この国が特に医療レベルが飛び抜けて高いわけではありませんが、2005年から認知症を減らす様々な取り組みをしてきた成果が実を結んだのではないか、と考えられています。その具体的な取り組みについて紹介し、認知症予防の手がかりを探ってみたいと思います。
●イギリスで認知症が減少した驚くべき事実
2013年、イギリスの医学専門誌「ランセット」(The
Lancet)に、イギリスでは認知症が減少したという研究結果が報告されました。「認知機能と年齢」研究という住民を対象にした臨床研究が20年以上前からイギリスでは行われています。この研究成果として、75歳以上のすべての年代で認知症が2~3割減少したと報告され、世界中の認知症研究者は驚きました。
●日本人の認知症有病者率世界一
日本は全人口における認知症有病率が2.33%となり、OECD加盟国のうちで最多となりました。
これは2位のイタリア3位のドイツと比べても高い値であり、OECDの平均である1.48%と比べてると大きな乖離がみられます
75歳以上のすべての年代においてイギリスでは減少していますし、日本では増加していますので、単に高齢化が原因ではないわけです。この違いがどこにあるのか?それを突き止めることが、認知症を減少させる方法を見つけることにつながると言えます。
●喫煙が原因か?
イギリスの一人当たりの喫煙本数は日本の3分の1程度で、煙草の価格が影響していることは明らかです。
●塩分が原因か?
また、イギリスでは国を挙げて減塩に取り組み、パンを製造する業界団体に働きかけて、塩分を3年間で10%削減することに成功しました。すでにイギリスでは2005年の時点で、1日当たりの男性の塩分摂取量は10g未満、女性の塩分摂取量は8gを下回っています。この10%減塩だけで、医療費を年間2600億円減らすことに成功したと推定されており、減塩の効果は絶大です。
40歳以上の成人で30%程度が本態性高血圧に罹患(りかん)しているとされるわが国では、認知症予防にも減塩キャンペーンが特に重要です
●生活習慣病が原因か?
イギリスの病院を統括している機関が出している患者さん向けパンフレットでは、脳卒中、心臓病、糖尿病、腎臓病などの循環器病が認知症と歯車でつながっていることがはっきりと示されています。このように生活習慣病をしっかりと治療することが認知症予防に直結することが明らかになってきたのです。
●まずは毎日の食事・・できることから認知症予防
厚生労働省のホームページにも、塩分を控えるための12か条が記載されています。その12か条を要約すると、薄味に慣れ、漬け物・汁物を控え、酸味・香辛料・油を有効に使い、保存食を食べ過ぎないようにする。