食欲を支配している2つのホルモン

●レプチンとグレリン

  レプチンとグレリンは食欲とダイエットに大きな影響を与えるホルモンです。これらのホルモンの働きについて知る事が大切です。

身体を維持するために食欲があり、そして燃焼するカロリーより摂取カロリーが少ない状態が続くと、身体は食欲を増進するホルモンを出すようになり、より強い空腹を感じるようになってしまうのです。
体脂肪へのホルモンの働きといえば、インスリン、テストステロン、エストロゲン、コルチゾールなどのホルモンついてよく耳にするでしょう。
たとえば、インスリンは脂肪貯蔵に関連するホルモンであり、体重増加と肥満に直接的に関連しているということが言われます。厳密に言うとインスリだけではありません。体重増加についてはインスリンよりさらに重要で直接的な役割を果たしているホルモンが存在します。それが“レプチン”と“グレリン”です。

これら2つのホルモンはエネルギーのバランスに直接的に影響し、体重減少のために非常に重要な役割を果たします。身体の組成を改善し、長期的な体重コントロールを可能にしたいと考えるのであれば、レプチンとグレリンの働き、そしてそのコントロールの仕方を知ることが非常に重要な鍵となります。

●レプチン
レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、基本的に食事をしたあと分泌されます。レプチンが分泌されると、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され、満腹感を感じるようになります。すると、食欲が抑制されるという仕組みです。
レプチンという名前はギリシャ語の「レプトス」に由来し、「痩せる」という意味を持ちます。まさしく、痩せる効果のあるホルモンだというわけです。

レプチンには食欲を調整する役割があると考えられ、食欲を抑制するものとして知られています。レプチンは食欲、渇き、睡眠や気分といった多くのプロセスに関与している脳の視床下部に働きかけるため、食物摂取に影響を与えるのです。
例えば、何かを食べるとレプチンの値は上昇します。上昇したレプチン値は脳にシグナルを送り、脳は身体にもうお腹が一杯だ、フォークを置こうと告げるわけです。しかし、レプチンに耐性があったり、またはレプチンの通り道がなんらかの理由で機能しなかったりすると(レプチン抵抗性)人は食べ過ぎてしまうこととなり、食物摂取に抑制が効きにくいのです。つまり、食べ過ぎているということを感じることができないのです。
レプチンはこうした働きから、長期的な食生活やダイエットに大きな影響を与えることがお分かりいただけるでしょう。

レプチンの負のスパイラル
レプチンは脂肪細胞に隠れるように貯蔵されています。脂肪細胞が増えるにつれ、レプチン値は上昇し、食事を減らし、カロリーを消費するようにと脳に伝達します。
反対に摂取カロリーを減らし、体脂肪が減り始めると、レプチン値は下がり、食事の量を増やし、カロリー消費を減らすようにと脳に伝達します。これはエネルギー消費と食物摂取を規制する安全メカニズムのようなものです。
この説によると、体脂肪の多い人はレプチンが多く、結果として食べ物への渇望も低いのではないかと思うかもしれません。理論的にはそうなのですが、研究によると、レプチンは脂肪細胞から分泌されるのですから、太っている人のほうが食べ過ぎずに済むのではないかと考える人もいるかもしれません。
ところが、実際にはそうはいきません。

体脂肪が多いと、レプチンの受容体が鈍くなってしまうからです。たしかにレプチンの分泌量自体は増えるのですが、それを上手に受け取ることができないため、食欲を抑えることはできません。レプチンの値が高くても、肥満状態にある人は食べ続け、エネルギー消費も増えないという結果も出ています。このような状態は“レプチン抵抗性”と呼ばれています。体重が増えるにつれ、脳へ伝達されるシグナルが妨害されたり、感度が落ちたりして、結局食べ続けてしまうことになるのです。

●“レプチン抵抗性”を治す
体重減少や体重の現状維持を目指しているのなら、レプチン抵抗性は明らかに大きな問題です。実際、レプチン抵抗性は最も重要な生化学的な肥満原因の一つと考えられています。
体脂肪を減らすことはレプチン抵抗性を矯正するひとつの手段ですが、何より時間がかかってしまいます。レプチン抵抗性を矯正したい場合、以下の戦略が考えられます。

1.ジャンクフードをやめ、フルーツや野菜を摂る
過度の炎症は、レプチンの脳視床下部へのシグナル機能を弱める可能性があります。果物や野菜を多く含む、基本的に加工されていない食事をオメガ3や抗酸化物質を含むサプリメントと摂ることで、炎症を収める効果が期待できます。
クッキーやスナック類は美味しいものの、未加工の食物より満腹になりにくく、カロリーも高く、栄養面でも望ましいものではありません。

2.運動する
定期的に運動することはレプチン耐性を改善し、炎症を抑える上で非常に重要です。筋トレと高強度のインターバルトレーニングはレプチン値を調整するのみでなく、筋肉を増強し、脂肪を燃焼させることができます。

3.タンパク質摂取量を増やす
タンパク質は腹持ちが良いだけでなく、レプチン感受性を向上させる可能性があります。毎食、30グラムの脂肪の少ないタンパク質を摂るようにしてください。鶏胸肉、白身魚、豆腐、赤身の牛ひき肉などが適切です。

4.睡眠時間を増やす
質の良い睡眠には数多くの利点がありますが、日常的に睡眠時間を8時間確保することでレプチン感受性を向上できるかもしれません。眠りにつくのが難しいならば、いつも決まった時間にベッドに入るようにする、テレビやスマートフォンは寝る30分前には見ないようにする、寝室は暗くする、騒音が入らないようにする、寝室の温度を適温にする、といったことを試してみてください。

●グレリンの働き
レプチンとは対照的に、グレリンには食欲を増進させる働きがあります。グレリンは主に胃で放出され、その値が上昇すると脳に空腹を知らせるシグナルを送ります。食後3時間以内にグレリンの値は元の水準に戻ります。
年齢、性別、BMI、血糖値、インスリン値、レプチン値、成長ホルモン(GH)等の要素がグレリンの値に影響を与えることが知られています。例えば、レプチンそれ自体でグレリンの値を下げることができます。
さらに、激しい運動の後に空腹感を感じないのは、成長ホルモンの影響の可能性があります。成長ホルモンはグレリンの値を下げ、結果として食欲を削ぎ、摂食量を減らす助けとなります。

空腹との戦い
単純に言うならば、私たちはグレリンのせいで空腹を感じるのです。空腹感はなぜ重要なのでしょうか?様々な研究で、空腹感がダイエットを失敗に終わらせる大きな要因のひとつであることがわかっています。
様々な研究によって、カロリー制限ダイエットの後で、グレリン値が上昇するということがすでに判明しています。
ニューイングランド医学ジャーナルに掲載されたある研究では、6ヶ月間のダイエットの後で24%ものグレリン値の上昇が見られたという結果が出ています。また、オクラホマ大学の研究者らによる男性ボディビルダーを対象とした最近の研究では、6ヶ月間のダイエットの後、40%ものグレリン値の上昇が見られたと報告されています。
継続的にダイエットをしていたり、過去に何回もダイエットをしていたりする場合は、通常のグレリン値が上昇していることが考えられます。1年中ずっと痩せた体型をキープしたい人や、またダイエットをしようと考えている人には悲しいニュースです。

●グレリン値の上昇を抑えるには?
グレリンとダイエットに関する研究は限られているものの、最近の研究では、食欲をコントロールし、グレリンと戦うための効果的な戦略が明らかになりつつあります。

1.食物繊維のサブグループである、オリゴ糖を1日に約20グラム、食事ごとに少しずつに分けて摂取するとグレリン値、エネルギー摂取量、血糖値、インスリン値を下げる効果があるそうです。

2.高タンパクの食事は様々なメカニズムにより満腹感が高くなることが知られていますが、高タンパク質の食事はグレリン値を下げる助けにもなります。

3.高脂質、低糖質のケトン食を実践してみると、グレリン値を下げ、食欲をコントロールし、空腹感を減らす助けになります。

●レプチンとグレリンのまとめ~
混同しないようにもう1度まとめておくと、『食欲を抑制し調節するホルモンがレプチン』、反対に『食欲を増進させるホルモンがグレリン』ということですね。
体脂肪が多くなってしまっている人は、食欲を抑制するレプチンの感受性が鈍くなってしまいる(レプチン耐性)ので、それを矯正するには、
1.ジャンクフードをやめ、野菜やフルーツの摂取を心掛ける。
2.運動をする。
3.タンパク質をしっかり摂取する事を心掛ける。
4.睡眠をしっかりとる。

そして食欲を増進させる、グレリンの値を下げるには、
1.筋トレなど、成長ホルモンが出るような運動を行う。
2.オリゴ糖の積極的な摂取を心掛ける。  (オリゴ糖を含む食品)
3.高タンパク食品の摂取を心掛ける。
4.糖質の摂取を減らし、脂質の摂取を増やすケトン食を実践してみる。(脂質自体のカロリーが高いため、1日の総摂取カロリーには注意する)

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