●筑波大学の研究
軽いウォーキングなどの運動をわずか10分間行うだけで、記憶をつかさどる脳の海馬が刺激され、直後の記憶力が高まることが、筑波大学の研究で明らかになった。
研究グループはこれまで、実験マウスを用いて、運動を行う事によって、学習・記憶を担う海馬が刺激され、新しく生まれる神経細胞の数を増やせることなどを明らかにしてきた。
そこで今回の研究では、超低強度の運動を10分間行った直後と安静後に記憶課題に取り組んだときの脳の活動を、ヒトの海馬の神経活動を領域ごとに画像分析できる、最先端の機能的MRI技術を使い高解像度で可視化し比較した。その結果では運動することによって脳が活性化することを確認している。
●米デューク大学医学部の研究では
思考力低下したり記憶力が低下していると感じた人は、ウォーキングを半年間続ければ脳が若返るのではないかと言う研究結果を、米デューク大学医学部教授らが「Neurology」12月19日オンライン版に発表した。既に記憶力や思考力が低下した高齢者55歳以上の男女が運動を6カ月間続けたところ、思考能力や記憶能力が向上し、特に目前の状況を判断し時系列に物事を整理していく脳の機能が特に向上することがわかった。
この研究は、高血圧などの心血管リスク因子を有している男女平均年齢65歳で目前の状況を判断して時系列に物事を整理する能力が、90歳の能力しか無い160名を対象に実施された。
研究では、参加者を
(1)適度な有酸素運動を行う群
(2)健康指導のみを受ける群
の2つの群にランダムに割り付けて6カ月間観察した。
運動では、10分間のウォーミングアップに加えて、35分間のウォーキングまたはジョギング、自転車こぎ運動などの有酸素運動を週3回行ってもらった。
その結果、運動を行った群では6カ月後の脳の機能が向上したのに対し、健康指導のみを受けた群では、脳の機能は低下し続けたことが分かった。
この結果について、専門家らは、一般的に考えられている「生活習慣の中に適度な運動習慣を入れる事は脳の機能を活性化させる」と言われてきたことが再確認され、特に今回参加した人たちが既に心血管リスク因子がある人でありまた、脳の認知機能の低下のある人たちの実験であったことから「運動を始めるのに遅すぎるということは無い」と言うことが証明されたと言っている。
またこのような結果がもたらされた1つの理由として、運動することによって血流が改善し脳への酸素供給量が増加し、認知機能の改善につながっていると考えられる。
●また他の研究でも
運動をすると、βアミロイドを分解する酵素(ネプリライシンなど)が活性化され、βアミロイドの蓄積を防ぐとする報告がある事がわかっており、また、運動をすることで筋肉細胞から放出されるホルモン(イリシン)が、脳の細胞死を抑制する神経栄養因子(BDNF)を増やし、海馬の神経細胞の活性化や神経伝達機能を向上させるとの報告もみられます。さらに、運動が体内の酸化ストレスを減少させ、同時にインスリン分解酵素を活性化させて、タンパク質のリン酸化や蓄積を防ぐ効果があることも指摘されています
●ウォーキングが脳を若返らせる!
運動と脳の活性については、多くの大学や研究団体がその結果を報告しており、運動することによって脳が活性がすると言う事はもう既に当たり前のことになりつつあります。
近年高齢化が進み認知症の人たちが急増すると考えられていますが、生活習慣によりこれを予防することができるのであれば、本当にありがたい事だと考えられます。