人間は満腹と食欲をどこで感じるか

●昔は胃が満腹と空腹を感じていると考えられていた

食事をすると満腹になる。1食べないといつかは空腹になる、そして食欲がわく。この単純な身体の生理的活動はどこで察知しているのであろうか?昔はほとんどの人が胃で感じ取っていた、とかんがえられていました。満腹になると胃が膨れて満腹を感じる。お腹が空くと胃が小さくなって食欲がわく。

●食欲の源は胃にあり

アメリカのカールソン教授などが多くの論文を発表して、食欲の源は胃にあると報告しました。有名な教授だったので、反論者もほぼいなかった。

●満腹と食欲のメカニズムが解明

今から約40年前そのメカニズムが解明されました。それは胃癌で胃を切除した人は、食欲は起こらないのか?と思われていたのですが実際は胃がない状態でも、食欲は起こることが判明したんです。そこで食欲の源泉は胃ではおかしいと言うことになりました。

ーー《脳の研究で決着がついた》ーー

●満腹中枢の発見

1942年からネズミの脳を針で突くと言う実験が行われました。そしてある時ネズミの脳を針でついていると、食欲が止まらないネズミが現れました。研究者たちは、脳のある一部に満腹を続く司る場所があってそこを針で壊してしまったので、満腹を感じることができなくなり食べ続けるネズミができたと判断しました・・。それが満腹中枢の発見につながったのです。

●摂食中枢の発見

1960年に入ってから、同じネズミの実験で食事を一切食べなくなってどんどん痩せていくネズミが現れました。前回は満腹中枢の発見につながりましたが、満腹中枢以外にも摂食中枢と言う場所がある事をこのことで発見したのです。

●人間の脳にも同じものがある

私たちの人間の脳の視床下部(本能を司る非常に古い脳)と言う場所に、ちょうど大きさにすれば米粒程度の大きさの満腹中枢と摂食中枢が1ミリメートル隣あわせに、存在しています。

●満腹中枢・摂食中枢は何で作動する

私たちの脳の満腹中枢と摂食中枢はほぼ血中ブドウ糖で作動するようにできています。血中のブドウ糖濃度が高くなると満腹中枢(のブドウ糖受容ニューロン)が作動し満腹を感じ取ります。そして隣の摂食中枢(ブドウ糖感受性ニューロン)に満腹を伝え、食欲を落とすのです。

●満腹中枢・摂食中枢はブドウ糖以外でも作動する

満腹中枢はエストロゲンの作用も受けます。その他にもレプチン、フェニールエチルアミン、覚せい剤、などの影響を受けることがわかっています。

満腹中枢(ブドウ糖受容ニューロン)・・・満腹を感じる
摂食中枢(ブドウ糖感受性ニューロン)・・・食欲を感じる

●食欲を感じるシステム

食事をする→→→血中ブドウ糖の上昇→→→満腹中枢を刺激、摂食中枢を抑制→→→膵臓からインスリンの分泌→→→血中ブドウ糖の安定→→→摂食中枢を刺激・満腹中枢を抑制→→→食欲を刺激

●その他にも食欲を感じる回路

空腹→→→交感神経が興奮→→→ノルアドレナリンやアドレナリンの分泌→→→脂肪の分解→→→血中遊離脂肪酸の増加→→→摂食中枢を刺激→→→食欲を刺激。

食欲を感じる回路はこのように単純ではない!他にも上に記したようにレプチンや、覚せい剤、エストロゲンの影響を受けることがわかっている。

●さらに食欲は複雑な欲求

例えば満腹であるにもかかわらず「ケーキは別腹」「食卓の上の残り物…、もったいない」「好きな焼き鳥の匂いがする……つい1串と」「大切なお客様に進められると満腹でも…」

●生理的に満腹でも、食欲や食べる行動は異なる

上のようないろいろな状況情報によって私たち人間の本能は生理的に満腹なのに食欲や食べると言う行動を起こします。

●食べるか食べないかは連合野(感情の脳)で決定する

視床下部(動物の脳)で感じた満腹は、連合野(人間の脳)に置いて食べるか食べないかを決定し、運動野に置いて実行する。

食べるか食べないかは連合野で決定する。本能だけでは決定しない。
《飽食の時代の問題》