長寿村に押し寄せた文明

●ビルカバンバの悲劇

世界3大長寿地域の1つと言われていた地域があります。それはエクアドルのビルカバンバと言うところです。海抜1500メートルの赤道直下、気候は温暖で野菜や果物が豊富な地域です。主食はユッカと言う芋ととうもろこし、そしてケシジユと言うチーズ。山中なので交通機関は全くなく、もっぱら歩くことが交通手段でした。

この地域は昔から、100歳以上の人が数多く住む村として有名でした。

●環境を一変する出来事

ここに1986年舗装道路が出来上がります。そうすると、街中から観光客が多数押し寄せるようになりました。村人は以前のように山中を走り回って働かなくとも、観光客に物を売る事だけで充分生活できるようになりました。観光客は100歳上の人たちが暮らしている、ビルカバンバと言う村の生活を見るためにたくさん押し寄せたのです。

●裕福になった村人は肥満に

そして村人は大変裕福になり、肥満者が急増することになります。そして2000年頃わずか14年で平均寿命が10歳も縮んだと言う報告がなされます。人間は飢餓に対しては非常に強い抵抗能力を持っているが、豊かさや飽食に対しては、長い人間の歴史の中でその経験を学ぶ事はありませんでした。

●地域の主食までも変化

ビルカバンバの人たちの主食は、大きく変化しました。以前はユッカと呼ばれる芋と乾燥とうもろこしを主食にしていましたが、それが油と食塩まみれのパンとチャーハンに変わったのです。

●文明による長寿村の崩壊

世界中でこのような新しい文明社会が到来することによって伝統的な生活習慣と食文化が壊され、健康的で長寿の村が崩壊した物語は後をたちません。
1・オーストラリアのアボリジニ
2・タンザニアのマサイ族
3・中国のウイグル族
4・ピマインデアンの悲痛
5・ナウル島の悲劇

●伝統を崩壊させる文明社会

文明の発展は「もっと豊かに」「もっと便利に」と言う欲望から、伝統的な食文化の崩壊を招き、そして文明機器の発達により、運動不足を招きます。それが肥満や健康被害度となって、その地域に根ざしてきた伝統的生活習慣が、新しい文明に取って代わられ、崩壊することによって人々の健康に与えるインパクトも大きいものとなったのです。