肥満遺伝子に関しては現在数多くの遺伝子が発見されています。その中でも名前が知られているものを挙げて簡単に説明しましょう。
●β3アドレナリン受容体遺伝子の変異
β3アドレナリン受容体遺伝子の働き
交感神経活性→→→ノルアドレナリンの分泌→→→β3アドレナリン受容体感知→→→白色脂肪細胞で中性脂肪の分解・褐色脂肪細胞で熱産生
(元々、肥満を防ぐ方向に働く遺伝子)
このβ3アドレナリン受容体遺伝子は交感神経が活発になると、ノルアドレナリンを分泌しそしてβ3アドレナリン受容体がそれを感知し、さらに白色脂肪細胞において脂肪を分解、そして褐色脂肪細胞で熱産生を活発化させると言う働きを持っています。ですから通常であれば肥満を防ぐ方向に働く遺伝子なのですが、
この遺伝子は408個のアミノ酸の連鎖でできておりその64番目のアミノ酸がたった1個トリプトファンからアルギニンに変異して、倹約遺伝子(肥満になりやすい遺伝子)となっているのです。この遺伝子変異を持っているのは日本人では34%と言われています。
●UCP-1(アンカップリングプロテイン-1)遺伝子の変異
脱共役タンパクと言われ、褐色脂肪細胞の中でエネルギーを熱に変えている浪費遺伝子で、タンパク質で基礎代謝を上げる役割をしている。この遺伝子に変異が起こっている遺伝子で倹約遺伝子(肥満になりやすい遺伝子)となっている。一般的に日本人に見られるのは25%程度と言われている。
また白色脂肪細胞の中にも同じものが存在し、UCP-2と名付けられている。そして骨格筋に存在するものはUCP-3と言われる。
●β2アドレナリン受容体遺伝子の変異
β3アドレナリン受容体遺伝子とは逆の働きをしている遺伝子で、基礎代謝を下げる方向に働いている。この遺伝子が変異することで、痩せやすい遺伝子と言われています。日本人のこの遺伝子を持っている割合は、16%程度と言われています。
●PPARγ(ピーパーガンマ)ペルキオシソーム増殖活性化受容体・の変異
この遺伝子は脂肪細胞の分化・肥大化に大きな役割を果たしていると考えられています。この遺伝子のスニップ(遺伝子変異)は通常白人に多く、日本人では数%で高脂肪食には強く痩せやすい遺伝子と言われています。
◎いずれにせよ数多く肥満に関わる遺伝子が発見されています。しかしながらどうすることもできないほど大きな力を持っている遺伝子の発見は未だかつてありません。
とりあえず肥満の原因の最大の要因は、食生活と運動習慣と言う環境因子によるものだと心に刻んで欲しいものです。