注目の長寿ホルモン!

皆さんアディポネクチンと言う名前を聞いたことがありますか?肥満学の世界では非常に有名な言葉です。さてアディポネクチンとは何のことでしょう?

アディポネクチンとは内臓脂肪から出ているサイトカインの1種で、大量に分泌されていることが発見されました。発見したのは大阪大学の松沢教授のチームで、世界で初めてこのアディポネクチンを発見したのです。

このアディポネクチンは善玉のサイトカインで、生活習慣病の多くに関わっていることがわかってきました。最近ではこのアディポネクチンの血中濃度が長寿とも関わっていることが報告されています。百歳以上の人たちのアディポネクチンの濃度を調査していると、一般平均の約2倍の分泌をしていることがわかりました。また一方女性は男性の1・5倍分泌しています。そのことから最近では長寿ホルモンとも呼ばれています。

●アディポネクチンは糖尿病の特効薬

食事をしてブドウ糖が血液に吸収されると、血糖値が上がり、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンが正常に作用すれば、血液中のブドウ糖が筋肉や脳で利用されたり、肝臓や脂肪組織に取り込まれてグリコーゲンや脂肪として貯蔵されたりして、数時間後には血糖値が元に戻ります。

しかし、肥満になると、細胞がインスリンの命令を受けにくくなり(インスリン抵抗性)、血糖値が下がりにくくなってしまいます。アディポネクチンには、骨格筋や肝臓における脂肪の燃焼を促進してインスリン抵抗性を解除する作用があるといわれており、糖尿病を抑制する働きをしています

●アディポネクチンは動脈硬化の特効薬

アディポネクチンには、糖・脂質代謝異常を改善する作用があるため、間接的に動脈硬化の抑制に影響しているといわれています。また、ラットの血管の壁に傷を付けると、傷ついた部分にアディポネクチンが集まることが判明し、血管壁に直接作用して動脈硬化を抑制する働きも持っているのではないかと考えられています。

試験管での実験や、動物を使った研究結果から、アディポネクチンは血管壁の中の細胞(血管内皮細胞)やコレステロールを取り込むマクロファージなどに作用して、脂質がたまることを防いだり、炎症反応を抑えたりして、動脈硬化の進展を防いでいる可能性があるとされています。

●高血圧や心臓病を予防する作用もあるとされる

高血圧患者の血液の中のアディポネクチン濃度は、血圧が正常な人と比べて低いことがわかっています。つまり、アディポネクチンは高血圧の抑制にも効果的な可能性があると考えられているのです。ヒトを対象とした研究で、血管を拡張させる機能と血中アディポネクチン濃度との間には関連性があることがわかり、アディポネクチンは血管内皮細胞に働きかけることで、高血圧を抑制していると考えられます。

●糖尿病や脂質異常症、高血圧は、いずれも狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患を引き起こす可能性があります。さらに、血中アディポネクチン濃度が低いことも、冠動脈疾患を引き起こすのではないかと指摘されています。つまり、アディポネクチンは、糖・脂質代謝や血圧を健康的な水準に保つことで間接的に冠動脈疾患を予防し、血管を拡張させることで冠動脈疾患を直接的にも予防するしていると考えられるのです。

●近年、アディポネクチンに関する研究が進められ、作用のメカニズムが分子レベルで解明されてきています。近い将来、アディポネクチンの作用を応用した糖尿病や動脈硬化の治療薬が登場するかもしれません。