ストレスにさらされると、どうなるか?

●2つの作戦でストレッサーと交戦

悪いストレスを感じると、人のカラダはどう反応するかを見てみましょう。人のカラダは、常に安定した働きができるように自律神経系、内分泌系、免疫系の3つのシステムが相互連携して健康が保たれています。

この3軍の防衛プログラムを「ホメオスターシス」と言います。ストレッサーはまず大脳皮質で知覚され、視床下部で刺激に応じてカラダが臨戦態勢に入るよう指令が出されます。自律神経と内分泌をつかさどる視床下部の主な作戦は次の2つです。

★作戦1 中心部からカテコールアミンを分泌

自律神経には交感神経と副交感神経があり、車のアクセルとブレーキのようにバランスをとって機能しています。交感神経が活発になるのは活動時や緊急時で、逆に副交感神経はリラックスしているときに、消化や吸収を促進します。ストレッサーによる刺激を受けると交感神経が優位になり、おなかにある副腎髄質からカテコールアミンという物質が分泌され、心拍を速めたり血糖値を上げたりしてストレッサーに対抗します。

★作戦2 表層部からコルチゾールを分泌

内分泌系では、視床下部の下にある脳下垂体(ホルモンの分泌を司る)が副腎皮質刺激ホルモンを分泌させ、副腎皮質に伝えます。するとコルチゾールというステロイドホルモンが分泌され、代謝活動や免疫系を活性化させ、全身的なストレス状態を緩和しようとします。また、脳の神経細胞に働くベータ・エンドルフィンも分泌され、不安や緊張を和らげます。 

実際は、ストレッサーの刺激により、自律神経系、内分泌系、免疫系の3軍は複雑なネットワークの中で何度もフィードバックされ、互いに影響しあってストレス反応を多様なものにしています。

ストレッサーが適度ならこのシステムはうまく機能するのですが、調節可能な限度ギリギリの状態が長く続くとさすがに消耗してしまいます。体内の防御体制が破壊され、その結果心身に不調を引き起こすことになります。食欲低下、疲労感、不眠、イライラ、憂鬱などのストレス反応となって現れます。

●自律神経が反応する4つのパターン

★自律神経の働きは4つのパターンに分けられます。

①交感神経が機能 → 怒り、驚き、恐怖

②交感神経と副交感神経がバラバラに機能 → 持続的不安、緊張

③副交感神経が機能 → リラックス状態

④交感神経と副交感神経がともに抑制 → 抑うつ、疲弊状態

普通、交感神経と副交感神経はどちらかが機能しているときは、もう一方は休んでいます。ところが、長い期間持続する精神的ストレッサーが加わると、交感神経も副交感神経もどちらも機能した異常事態に陥ります。

胃の機能で説明しましょう。普通は、交感神経が興奮すると胃はその働きを止め、副交感神経が興奮すると胃の働きが活発になり胃液の分泌を増やします。だが、両方機能すると正常な活動ができなくなり、その結果、胃潰瘍ができたりするのです。この状態が高じると、両方の機能が低下した状態になります。交感神経が低下してカラダを動かすのがおっくうになり倦怠感が現れます。副交感神経の低下で消化活動も低下し、食欲不振、便秘などの症状が現れます。つまり、これが「うつ」状態です。